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方法論的な価値論争:(序)国民経済学は幻想であるか?(Yu-ta)
「フリードリッヒ・リスト的な意味合いでの国民経済学は幻想にしか過ぎません」というのは、とある研究会にてヨーロッパ経済を専門とする経済学の先生が言った一言です。誤謬なきために一応補足しますと、かく言うドイツという国は、ここ100年間を見ただけでも大きくは4回、国家としての領土が変わっているのに、経済はそのたびに壊滅になったか?否、決して政治的な領域の変化にも関らず、経済は逞しかった、という感じの意味合いでです。
さて、そんな訳で、政治空間と経済空間の一致を前提とした国民経済、或いは国民経済学は幻想なのでありましょうか?
経済学で “一国経済が”という枕詞が、基本=国内経済、オマケ=国際経済、海外貿易et al という構図を暗黙に示唆していて、実は現実とは違うというのは、的を得た指摘でありましょうし、特に国境という堤防が見えづらくなった現在の(域内的な)EUでは、もはや政治領域としての国境線と経済的領域、すなわち市場圏というのは必ずしも一致しない、という現象が顕著になりつつあるように見えることも確かです。
ただ、ここで“F,リスト的な意味合いで”というのが、その先生が何を言わんとするかは確めていないのですけれども、酒の肴にさせてもらいますと、いわゆる国民経済学が世界主義的鳥瞰図を旨とするリストの思惑とは裏腹に、国家主義と結びついて、ドイツ帝国の経済政策と別ち難い関係にはありました。リストの国家主義との関りは決して全面的支持ではなくて、大英帝国との関係においてであって、そのための論法として発展段階論をいうわけです。低段階にあるドイツをいかにして高次にある大英帝国の水準まで引き上げていくか、そういう意味合いです。ただヴェルテンベルグ時代のリストの言う国民経済は、政治的・経済的に後進国ドイツがいかにロシア・フランスという挟中に位置しながら、しかも強大な大英帝国に拮抗するための近代国家を建設するか、というイデオロギーが込み込みプランとしてあるんですけれども、確かに科学としての経済学をする時にはあまりいただける話ではありません。
しかしそれではF.リスト的な国民経済学は科学としての経済学ではない、とは言えても幻想だとは言えません。二度のヨーロッパ大戦の惨劇を幻想であってくれ、と思った人々は一体何千万人いたのでしょうか? 或いはその戦争で命を落とした人々、逆に加担したが故に命を落とした人々、生き延びたが戦後も苦しみ続けた人々…
小林源文氏が「黒騎士物語」の中で、ドイツ兵が同僚に向けて口にする一言。
「お前も俺も病気だ。そして病名は戦争と言う名の病気だ。しかしお前がいないと俺達は戦争を出来ない。だからさっさと持ち場へつけ!」(原文に忠実ではないけれども)
人間と言うのはある程度、状況に適合できる生き物なのですが、戦争という異常にも適応できるといいます。ただし平常な世の中の心持ちからすると、限界的なストレスを感じるらしいので、一切の感情を抑圧して、ただ敵を倒すこと、そして自分が生き延びることのみに精神を集中します、そうでないと気が狂ってしまうか自殺してしまうから。
過去のヨーロッパ帝国主義と世界大戦は現実にあった歴史であって,決して幻想ではありません。話しは少しそれましたが、国民経済学そのものは現実には存在しない願望の賜物であったかもしれません。ただし、そんな詰まらない願望のイデオロギーで一体どれほどの人間が苦痛を強いられたことか…。ドイツを判とした戦前の日本の事を我々自身が“あれは幻想でありましてナシです、ナシで。えぇ。”と言う事で、明治から敗戦までは睡眠時間みたいなものですな、などとは普通は言いません。戦前をどう捉えるかは人にとって意見が違いますが、兎も角、事実としての歴史解釈上での相違ですから次元が違います。
そういったものを経済学として批判する事はできないとしても、幻想だった、つまり存在しなかった、とするのは過去であってもEUというのはそうした歴史の過程の上で築かれた制度なのですから、一寸乱暴な言い方ではあるな、と感じた昨今でありました。
さて、そんな訳で経済学での科学性と価値(主観的な価値)との関係を論じたものをそのうちに扱ってみますので、今回は序編みたいな感じ。

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F.リスト 小林昇 訳『経済学の国民的体系』岩波書店、1970
F.リスト 正木一夫 訳『アメリカ経済学網要』(社会科学ゼミナール39)未来社、1966
小林昇『東西リスト論争』みすず書房 1990

永岑三千輝『ドイツ第三帝国のソ連占領政策と民衆 : 1941-1942』同文舘出版、1994
小林源文  『黒騎士物語』日本出版社 1986
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